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ハンブルク美術大学HFBK『Jahresausstellung 2022』 | MERZ

ハンブルク美術大学HFBK『Jahresausstellung 2022』


ベルリン、デュッセルドルフ、ミュンヘン、フランクフルトの美大と並びドイツの有名美術大学のひとつに数えられるハンブルク美術大学(HFBK)。2月11日から2月13日にかけて開催されたHFBKのオープンスタジオ『Jahresausstellung 2022』では、オミクロン株の流行に伴い、※2Gプラスの入場制限がかかっていたものの、年に一度、全学生が展示する学内展とあって、展示を見るために足を運んできた多くの人が、大学前に長蛇の列を作っていた。
今回は大学隣に新たに建てられたスタジオ棟『Atelierhaus』のマスター課程の展示を紹介したい。


2Gプラス:ワクチン接種者(geimpfte)、感染からの快復者(genesene)でも陰性証明、もしくはブースター接種証明の提示が必要。

Atelier Neubau Aussenansicht frontal; Foto: Tim Albrecht

Atelier Neubau Lichthof; Foto: Tim Albrecht

マスタークラス計12のスタジオスペース(2階~4階)とギャラリースペース(一階)を設けた、本館に隣接する延べ床面積3700㎡のスタジオ棟『Atelierhaus』。学生数の増加に伴い十分な制作スペースを確保できない学生のための新たなスタジオとして、昨年、竣工し、今回『Jahresausstellung 2022』の一環として一般に初公開された。

なかに入って左側、通りに面した一階のギャラリースペースでは『Hiscox Kunstpreis(Hiscox芸術賞)』のノミネート作品が並ぶ。HFBK、12クラス(絵画、彫刻、タイムベースト・メディア)の各教授が推薦した学生12人のなかから、外部の審査員によって一人の学生に賞(7,500ユーロ)を授与する、2008年から毎年開催されているアワードらしい。

『Hiscox Kunstpreis』
今後、様々な用途に使われるというギャラリースペース『HFBK Galerie』

Prateek Vijan『ID Card
 Kunstverein in Hamburg

今回のアワード受賞者はサイモン・デニー/アンジェラ・ブロック クラス(タイムベースト・メディア)からインド出身のPrateek Vijan。参加型のインスタレーション『ID Card』では木片を観客が選び、自身でプログラミングしたスキャナーで読み取ることで木目から固有の音が奏でられる。

誰がどの木片を、なぜ選んだのか?スキャンは中立を装いつつも、産地、年代、サイズ、形状、つまりは「Identifikation(身分証明)」のために校正されるのです。聞こえる音は、対象が問われる瞬間であると同時に、識別や標準化のプロセスを経て、日常の一体感の中で連帯責任を負った後の私たちでもあるのです。

審査員(Krist Gruijthuijsen(KW ディレクター)、Fatima Hellberg(Bonner Kunstvereinディレクター)、Chloe Stead(フリーライター、frieze編集者)

https://hfbk-hamburg.de/de/service/pressemitteilungen/20220211-HISCOX-Kunstpreis-im-neuen-Atelierhaus-der-HFBK-Hamburg-vergeben/

向かいの展示スペースではロンドン芸術大学ゴールドスミス・カレッジとの展覧会交流プロジェクトでゴールドスミス・カレッジの学生約10人の作品が展示されていた。


『Atelierhaus』2階から4階の各フロアはそれぞれタイムベースト・メディア、彫刻、絵画に所属するマスター過程の学生のスタジオとして普段利用されている。マスターの展示というだけあって、全学生が展示するHFBK本館よりもクオリティの高い作品が多かった。ここからは各クラスの展示を簡単に紹介する。


絵画|Malerei 

絵画科の教授は Rajkamal Kahlon、Jutta Koether、Anselm Reyle、Jorinde Voigtの4人。
ネオン管、PVC、アクリル板、鏡など多彩なレディメイド素材を組み合わせた絵画/彫刻で知られるアンゼルム・ライラ(1970~)。ノーテーション(記譜法)とダイアグラム(図式)を用いた絵画/ドローイングを手掛けるヨリンデ・フォークト(1977〜)。フェミニズムやジェンダー・ポリティクスへの問題意識を出発点に絵画/パフォーマンス/コラボレーションを展開するユタ・クータ(1958〜)。植民地時代の歴史や暴力をテーマにリサーチベースの絵画を手掛けるRajkamal Kahlon。現代アートの第一線で活躍するアーティストがそれぞれ異なるポジションから教鞭を執る。

Klasse Anselm Reyle

アンゼルム・ライラ(Anselm Reyle)クラス
https://www.instagram.com/klassereyle.hfbk/?hl=de


Klasse Jutta Koether

ユタ・クータ(Jutta Koether)クラス


Klasse Jorinde Voigt

ヨリンデ・フォークト(Jorinde Voigt)クラス
https://www.instagram.com/klassevoigt.hfbk/?hl=de


タイムベースト・メディア|Zeitbezogene Medien

タイムベースト・メディアはビデオ、フィルム、スライド、音響、コンピュータなどテクノロジーを用いた、鑑賞が時間と共に展開していく媒体を指す。(ブルース・ナウマン、ピピロッティ・リスト、ビル・ヴィオラなど)
タイムベースト・メディア科では、暗号通貨、ブロックチェーンなどテクノロジーがもたらす社会的・政治的な諸問題をインスタレーションを通じて考察するサイモン・デニー(1982〜)、時間的側面をテーマに光、音、テキストを取り入れた彫刻を手掛けるアンジェラ・ブロック(1966〜)など、4人の教授が教鞭を執る。

Klasse Simon Denny

サイモン・デニー(Simon Denny)クラス
https://www.instagram.com/klassedenny.hfbk/?hl=de


彫刻|Bildhauerei

ハンブルクに限らずドイツの美大では木彫 、石彫 、塑像といった従来の伝統的かつ彫刻的な素材・手法を用いた表現を見ることは殆どない。2011年のターナー賞受賞アーティスト、マーティン・ボイス(1967〜)、写真と彫刻による横断的な表現で、虚構と現実の境界を問いかけるトーマス・デマンド(1964〜)など、教鞭を執る教授陣(4人)がそうであるように学生の作品も、ひとつのメディウム・素材に依存しない「現代アート」にコミットした領域横断的な表現(平面、立体、映像、インスタレーションなど)が多数を占める。

Klasse Thomas Demand

トーマス・デマンド(Thomas Demand)クラス


Klasse Andreas Slominski

Andreas Slominski クラス

一見、ただ紙を剥がしたあとの痕跡に見えるが近づいてよく見てみると、紙ではなく彫刻的なアプローチで物質的な強度をもたせていることがわかる。街中で日常的に目にする平凡で刹那的なモチーフを相反する素材でレディメイド的にシミュレートした作品。


Klasse Pia Stadtbäumer

Pia Stadtbäumer クラス
https://www.instagram.com/klassestadtbaeumer.hfbk/?hl=de

個人的に気になったAnna Bochkovaの作品。遊園地をモデルにしたという陶のインスタレーションはソ連崩壊後のロシアで過ごした幼少期の記憶を再構成したもの。身体の一部が組み込まれ、鎖で有機的に繋がれた陶製の建築的彫刻は、廃墟化した街や遊園地を彷彿とさせる。ロシア出身のAnna Bochkovaは個人的・文化的な物語とロシア宇宙主義の接続、ポストヒューマニズムといった概念をテーマに取り組んでいるという。


HFBK 教授一覧

今回紹介した絵画、彫刻、タイムベーストメディアの教授一覧(一応、黒:男性、白:女性)。HFBKの場合は一年間の基礎課程後、教授やクラスの学生との面談(試験)を経て特定の教授のクラスに入ることになる(入れない場合は廊下学生)。この他にも舞台芸術、デザイン、映像、グラフィック/写真などの学科も。
https://www.hfbk-hamburg.de/de/hochschule/professoren-nach-studienschwerpunkten/

絵画
Malerei 

Abel Auer
(基礎課程担当)
Rajkamal Kahlon
Jutta Koether
Anselm Reyle
Jorinde Voigt

彫刻
Bildhauerei

Michael Beutler
(基礎課程担当)
Martin Boyce
Thomas Demand
Andreas Slominski
Pia Stadtbäumer

タイムベースト・メディア
Zeitbezogene Medien

Angela Bulloch
Simon Denny
Jeanne Faust 
Annika Larsson
(基礎課程担当)
Michaela Melián

HFBKのYoutubeチャンネル
『Jahresausstellung 2022』HFBK本館の展示風景


ハンブルク美術大学『Jahresausstellung 2022』
会期 : 2022年2月11日~13日
https://www.hfbk-hamburg.de/de/stories/jahresausstellung-2022-der-hfbk-hamburg/

Nami
2015よりドイツ在住。現在はドイツの美大に在学中。 主に絵画のことについて。

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