今回紹介するのはドイツ第二の都市ハンブルクに位置するハンブルク美術大学(通称HFBK、ドイツ語読みでハーエフベーカー)。かなり遅くなってしまったが、前回のデュッセルドルフに引き続き学内展『Jahresausstellung 2019』のレポートをお伝えする。(rundgangが一般的だけどhfbkの場合はJahresausstellungというらしい。)
ドイツ美大の日本語情報というのはまだまだ少ないので、日本人の卒業生を多く輩出してるデュッセルドルフに憧れて来る人は多いが、実際ドイツにはベルリンとデュッセルドルフ以外にも数多くの美大が存在する。特にミュンヘン、ベルリン、フランクフルトなど大都市の美大はいずれも人気があり、HFBKもそのうちのひとつとして数えられるだろう。
もふもふとした触感が気持ちい謎の物体
HFBKの卒業生は著名なアーティストも数多く、過去にはマーティン・キッペンバーガー(Martin Kippenberger,中退), アルバート・オーレン(Albert Oehlen), ダニエル・リヒター(Daniel Richter)などがこの大学で学んでいる。教授陣の多くは国際的に活躍するアーティストで、Albert Oehlenも在学中はジグマー・ポルケのもとに師事していた。(デュッセルドルフの記事で少し触れたようにドイツ美大は入学してすぐ、あるいは基礎課程を経て2年目には各教授のクラスに所属することになる。)
このようなアーティスト間の師弟関係というのはドイツ現代アートを俯瞰する上で重要な手がかりになり、教授単位で分かれたクラスはある種コミュニティーのような役割を果たすこともある。アンドレア・グルスキー、トーマス・ルフをなどを輩出したデュッセルドルフ芸術アカデミーのベッヒャーシューレ(Becher–Klasse)などはその典型と言えるだろう。
それでは今回もフォトレポートで各クラスの展示をざっくり紹介していきたい。
Werner Bütterクラス (絵画)
絵画クラス(Werner Bütter, Jutta Koether, Anselm Reyle )の中でもペインタリーな作品が多いのがWerner Bütterのクラス。1989年からこの大学で指導しているのでかれこれ30年。ダニエル・リヒターはこのクラスの卒業生。
部屋内にディスプレイをかざすと何か見えるという作品。
デュッセルドルフと少し違いhfbkでは絵画、彫刻などのファインアート領域以外にもタイポグラフィー、グラフィックなどデザイン的な領域が設けられている。ただやっぱりファインアートが強いかなという印象。
Andrea Slominski クラス (彫刻)
左上の矢印で360度見れる。
学内展の3日間はフィルムプログラムも組まれスルーしがちな映像作品も映画館のような巨大スクリーンでじっくりと観ることができる。
Anselm Reyle クラス(絵画)
2013年、日本のカイカイキキギャラリーでも個展が開かれたアンゼルム・ライラ。ライラクラスは本人の作品同様、ファウンドオブジェを組み合わせたものや既存の絵画観に捉われないダイナミックな作品など、「絵画」という枠組みに収まりきらないユニークな作品が多く、個人的には一番面白かった。
Anselm Reyle クラス
Jutta Koether クラス(絵画)
昨年、ミュンヘンのブランドホルスト美術館で大規模な回顧展が開かれたJutta Koether。日本ではあまり知られていないが、ソニックユース、キム・ゴードンとのコラボレーションなど絵画のみならずパフォーマンス、音楽も手がける女性アーティスト。
クラス展示はドローイング、絵画、立体作品など様々で、それぞれやりたい表現に対してメディウムを選択している感じ。
Jutta Koether クラス
とりあえずこれでドイツ美大の学内展紹介は終わり。ちょうど今の時期はドイツ美大受験の真っ只中だ。この記事を読んでいるのはドイツのアートに興味あのある人や美大受験を考えている人が多いと思うので、たまにはこうやって美大情報も書いていこうと思う。ちなみにベルリン、ミュンヘン、カールスルーエなどの学内展は夏開催。次書くときはその辺のレポートになるかな。
クラス(教授)一覧 ※2019年現在
彫刻
Martin Boyce, Thomas Demand, Sam Durant, Geelke Gaycken, Andreas Slominski, Pia Stadtbäumer
絵画
Werner Büttner, Achim Hoops, Jutta Koether, Anselm Reyle, Peter Wächtler
その他、デザイン、フィルム、舞台芸術など。
詳細はこちらから。
HFBKのyoutubeチャンネルからも展示の様子が見れます。