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アートケルン『Art Cologne 2019』 | MERZ

アートケルン『Art Cologne 2019』

4月11日から14日まで4日間、開催されていたアートケルンに行ってきた。
ヨーロッパのアートフェアといえばロンドンのFrieze、スイスのアートバーゼルが有名でドイツというといまいちピンと来ない人も多いかもしれないが、アートケルンは世界で最も古い現代美術のアートフェアの一つとして数えられている。


1967年に国際的なアートフェアとしてスタートしたアートケルン、53回目となる今年は22か国から177のギャラリーが出展している。前年に比べるとギャラリー数は減少したものの、ドイツ最大のアートフェアというだけあってやはりベルリンとは規模が違う。
今回のレポートでは出展ギャラリーとドイツで活躍するアーティストを中心に取り上げていきたい。

ヴォルフガング・ティルマンス(Wolfgang Tillmans.1968〜)
Filled with Light, b , 2011

Galerie Buchholz/ケルン,ベルリン,ニューヨーク

イザ・ゲンツケン (Isa Genzken.1948~)

アンネ・インホフ (Anne Imhof.1978〜)
Untitled. 2019

Galerie Buchholz /ケルン,ベルリン,ニューヨーク


ケルンのギャラリーGalerie Buchholzのブースではティルマンス、イザ・ゲンツケン、前回のヴェネチアビエンナーレで金獅子賞を受賞したアンネ・インホフなどドイツ人アーティストの作品が並ぶ。
戦後のケルンはベルリンにアートシーンが移るまでの間(とりわけ1970~1990) 長らくドイツのアートを担ってきた。お隣のデュッセルドルフには著名なアーティストを数多く輩出しているデュッセルドルフ芸術アカデミーもあり、ケルン、デュッセルドルフを拠点にしたギャラリーやアーティストは今なお多い。

マルティン・キッペンベルガー+ アルバート・オーレン(Martin Kippenberger + Albert Ohlen)
Galerie Nagel Draxler / ケルン, ベルリン

70年代後半から80年代初め、ドイツ版ニューペインティング「Neue Wilde (新野獣派)」の中心的なアーティストとしてケルンアートシーンを牽引したキッペンベルガー (1953~1997)とアルバート・オーレン (1954~)。上の作品はキッペンベルガーとオーレンの共作であり、二枚のキャンバスを額装して一点の作品にしている。同ギャラリーでは他にARペンクの作品も。

ヨルグ・インメンドルフ (Jörg Immendorff.1945〜2007)
ohne Title, 2006

Galerie Michael Werner / ケルン

アートケルンで一際印象的だったのがインメンドルフ晩年のこのペインティング。インメンドルフといえば表現主義的な筆致やビビットな色彩、デフォルメされた人物などメッセージ性の強い絵画が特徴的だがこの作品では一転して絵画自体の可能性を追求するような豊かな色彩、イメージが前景化している。

絵肌をよく見ると色を置いた後に紙で押し付け、それを他の部分に転写させたようなデカルコマニー的技法が使われていることがわかる。ボナールを彷彿とさせる色彩も美しい。

ゲルハルト・リヒター (Gerhard Richter.1932~)
Schönewald / デュッセルドルフ

紙に水彩で描いた作品

アンゼルム・キーファー (Anselm Kiefer.1945〜)
Die Ordnung der Engel, 2007

Galerie Ludorff /デュッセルドルフ

アートフェアの会場はコンテンポラリーアートと近代、戦後のアートを扱ったギャラリーセクションの2層に分かれ、後者のセクションではアンゼルム・キーファーやゲルハルト・リヒターなどの作品も展示されている。

Julia Scher (1954〜)
Esther Schipper / ベルリン


1989年にベルリンの壁が崩壊し、90年代に入るとケルンの多くのギャラリーはベルリンへと拠点を移す。サイモン・フジワラやライアン・ガンダーなどが所属するEsther Schipper もそのひとつだ。Esther Schipper のブースではアメリカを拠点に活動するアーティスト、Julia Scherのみにフォーカスを当て、ブース内に取り付けられた監視カメラの映像がモニターに映し出されるといったインスタレーション作品が展示されていた。

アンゼルム・ライラ (Anselm Reyle.1970~)
Untitled, 2019

König Galerie / ベルリン

カタリーナ・グロッセ (Katharina Grosse.1961〜)
König Galerie / ベルリン

ベルリンのKönig Galerie のブースではカタリーナ・グロッセ、アンゼルム・ライラ、Alicja Kwadeなどのベルリンを拠点に活動するアーティストの作品が並ぶ。ちなみにこのカタリーナ・グロッセの紙に描かれた作品はそれぞれ30,000ユーロ(約380万円)するそう。これがペインティングになるとおそらく0が一つ増えるのだろう。

カタリーナ・グロッセ (Katharina Grosse.1961〜)
Untitled, 2017

 Barbara Gross Galerie / ミュンヘン

Eberhard Havekost (1967~)
Galerie Contemporary Fine Arts (CFA) / ベルリン

CFAのブースはEberhard Havekost (デュッセルドルフ芸術アカデミー教授)とTal R 。ちなみに26日から始まるGallery Weekend Berlinもこの二人の展示。

Tal R (1967~)
Galerie Contemporary Fine Arts (CFA) / ベルリン

マルクス・オーレン (Markus Oehlen.1956~)
Galerie Bärbel Grässlin /フランクフルト

1985年にフランクフルトに開廊したGalerie Bärbel GrässlinはこれまでWerner Büttner, Günther Förg, Georg Heroldなど80年代、90年代のドイツアートシーンを代表するアーティストを紹介してきた。
今回のアートケルンではマークス・オーレンのペインティング作品を個展形式で紹介している。
マークス・オーレンはアルバート・オーレンの弟で、現在はミュンヘン芸術アカデミーの教授。


アートケルンではドイツ国外のギャラリーも数多く出展している。とりわけDavid Zwirner ,White Cube,Hauser & Wirth などのメガギャラリーは会場のメインスペースにブースを構え来場者の注目を集めた。
そういえば昨年はカゴシアンも出展してたけど今年は見なかったな。

ネオ・ラオホ ( Neo Rauch. 1960〜)
Kalter Mai, 2010

David Zwirner / ニューヨーク, ロンドン, 香港

ニューヨーク、ロンドン、香港の三ヶ所を拠点にするDavid Zwirnerのブースはヨーゼフ・ボイス、ジグマー・ポルケなどの巨匠からネオ・ラオホ、ティルマンス、トーマス・ルフなど現在活躍中のアーティストまでかなり豪華なラインナップ。ギャラリーオーナーのDavid Zwirnerはケルン出身。

ヨーゼフ・ボイス (Joseph Beuys)
Schlitten (The Sled),1969

David Zwirner / ニューヨーク, ロンドン, 香港

トレイシー・エミン (Tracey Emin.1963~)
I longed for you-I qanted you!,2019
In your mirror, 2015
The Forrest, 2015

WHITE CUBE / ロンドン,香港

リタ・アッカーマン (Rita Ackermann. 1968~)
Hauser & Wirth / チューリッヒ,ニューヨーク,ロンドン,香港,ロサンジェルス,サマセット,サンモリッツ,グシュタード


世界的にも有名なスイスのギャラリー,Hauser & Wirthではハンガリー出身ニューヨーク在住のアーティスト、リタ・アッカーマンによる個展形式の展示。オートマティックに描かれたドローイングと表現主義的な筆致を組み合わせた抽象とも具象つかない絵画。


その他、気になったギャラリー、作品などをいくつか紹介。

ロバート・ラウシェンバーグ (Robert Rauschenberg.1925〜2008)
Rose Pole (Spread), 1978

Galerie Thaddaeus Ropac / ロンドン, パリ, ザルツブルク

ジグマー・ポルケ (Sigmar Polke.1941〜2010)
Untitled, ca 2000
Mixed media on paper

Galerie Thaddaeus Ropac / ロンドン, パリ, ザルツブルク

ベルナール・フリズ (Bernard Frize. 1954~)
Lapu, 2018 (中央)

Galerie nächst St. Stephan / ウィーン

カイカイキキギャラリー、ペロタン東京で現在開催中のベルナール・フリズ作品も。

Raymond Hains(1925~2005)
Sans Titre n8J, 1990

Templon / パリ,ブリュッセル

戦後フランスの芸術運動「ヌーヴォーレアリスム」のアーティストとしても知られるRaymond Hains。街中の壁に貼られたポスターの残骸を切り取り、レディーメイド的に絵画へと転化させた作品などが有名。

塩田千春 (1972~)
State of Being (Books), 2019

Templon / パリ,ブリュッセル

ベルリン在住の塩田千春の作品も。ドイツに住んでると作品を観る機会がとても多い。

ダミアン・ハースト (Damien Hirst. 1965~)
Love, Hate, Life, Death, 2006

 Galerie Andrea Caratsch / サン・モリッツ(スイス)

ホルマリン漬けの牛やダイヤモンドの頭蓋骨など「生と死」というテーマのもとに制作してきたハースト。このペインティングでは本物の蝶が画面に貼り付けられている。

ダニエル・リヒター (Daniel Richter.1962~)
Problems of the Unknown, 2018

Galerie Haas / ベルリン

以上、全部観るのに結局半日くらいかかってかなり疲れたけど来たかいがあった。ドイツのアートと言えば今でこそベルリンという感じがあるが、ことアートフェアに関して言えばまだまだケルンには敵いそうにないという印象。アートケルンとの提携により迷走中のベルリンと違ってケルンは面白みこそ欠けるものの長い伝統に裏打ちされた安定感がある。来場者は学生から年配の方まで幅広く、コレクターっぽい人もちらほら。子ども連れの来場者のためにキッズルームが設けられているのも良かった。
アートケルンではドイツの主要ギャラリーがほとんど出展しているため、ドイツのアートシーンに興味がある人にはとてもおすすめ。ベルリンのギャラリーはArt Berlin(ベルリンのアートフェア)よりもなんだか気合が入っているような気も。


もう終了したけど一応アートケルンのリンクを。
Art Cologne 2019
記事内のリンクでは各ギャラリーのホームページにアクセスできます。

Nami
2015よりドイツ在住。現在はドイツの美大に在学中。 主に絵画のことについて。