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Travel around Art :ドイツ・ベルリンアート情報 - Part 26

ピーター・ドイグ(Peter Doig. 1959~) 『Milky way』, 『Ski Jacket』

ケルンからアムステルダムへ移動し、ゴッホ美術館で何気なしに展示を見ていると、ピータードイグの絵画が一点、最後の展示室にあったのは嬉しい驚きだった。
最後のフロアでゴッホに関連する画家としてゴーギャンやボナールの絵が展示されていたが、それを見てピータードイグの絵画がふと頭をよぎったのは、彼もまたその影響を大きく受けた一人であるからに他ならないからだろう。

Milky Way, 1990
チェルシー・カレッジ・オブ・アートのマスター過程在籍中に制作された作品。
Van Gogh inspiresという企画での期間限定の展示。

ドイグの絵画にはゴーギャン、ボナールといった後期印象派、あるいはナビ派の画家が用いた色面分割的な手法や、それに伴う筆致、色彩、構図などの影響が数多く見受けられる。
様々な既存イメージ(写真、ポストカード、新聞記事、映画のワンシーンなど)をソースとして用い、自身の記憶と混ぜ合わせ、再構築することで独自の心象風景を作り上げていくのが彼の絵画の大きな特徴だ。
また、ソースとなるメディアから写真的リアリティー、コンテキストを排除し、抽象的なイメージへと転化させることでより絵画的な画面を生み出している。
この絵にどことなく不穏な雰囲気が漂うのも、中心にホラー映画「13日の金曜日」のシーンから引用したカヌーに乗った少女が描かれているのが一因になっているからかもしれない。

モチーフの反復というのも彼の作品の大きな特徴でこの絵以外にもスケールを変えて同様にカヌーに乗った少女のイメージが描かれている。

Milky Way 細部、様々な筆致で描かれていることがわかる。


ピータードイグの絵画が日本で初めて紹介されたのは2006年、大阪の国立国際美術館で開催されたエッセンシャルペインティング展だったと思う。残念ながら当時その展示を見ることはできなかったが、渡独してから美術館のコレクションなどでピータードイグの絵画をみる機会が何度かあり、その中でもロンドンのテートモダンが所蔵するSki Jacket(1994年)はとても印象的だった。

ロンドン、テートモダンにあるSki jacket (右側) 1994年
日本のスキーリゾートの記事がモチーフとして使われている。

絵画自体の美しさはもちろん、何よりその非常に複雑に組まれた絵画構造(絵具の飛沫、厚く塗られた部分や薄く溶かれた絵具による偶発的な表情、何層にも重ねられた色面、大胆な筆致)その全てが渾然一体となり、絵画的強度をともなって魅惑的なイリュージョンを生み出している。
(ちなみにテートモダンのコレクションはテーマごとに展示室が分かれているため、「絵画とマスメディア」というテーマのもとで、リュック・タイマンス、マルレーヌ・デュマス、ヴィルヘルム・サスナルらの絵画と比較しながら見れるのも面白い。)

Sky jacket 細部

ドイグは昨年までデュッセルドルフ芸術アカデミーで教鞭をとっていたため、ドイツにも馴染みのあるペインターだが、ドイツには彼のようなペインタリーな具象絵画を描く作家は比較的少ない気がする。ただ、今の時代に「絵画の王道」で何十年も勝負しているのはやはりかっこいい。
2000年以降は比較的薄い塗りのペイティングが多くなってきて、近年の絵画ではまた新たな一面も見せつつある。


ゴッホ美術館、アムステルダム
『Van Gogh inspires Peter Doig』2018年3月9日〜9月23日まで
(ピーター・ドイグの絵画はMilky wayの一点のみ)



ブラザークラウス野外礼拝堂

Bruder Klaus Kapelle

大学も夏休みということで少し足を伸ばして、スイスの建築家ピーター・ズンドーによって2007年に建てられたケルン郊外のブラザー・クラウス野外礼拝堂へ行ってきた。

まずはケルン中央駅から電車で約40分ほどのところにあるEuskirchen駅へと向かう。
駅前にタクシー乗り場があるので運転手さんに『Bruder-Klausへ』と言うとすぐにわかってくれた。やはり行く人は結構いるんだろう。
10分ほど何もない田舎道を進んで行くとはるか先、広大な田園に建つ小さな建物が。
礼拝堂はまだまだ先だけど最寄りの駐車場で降車。(タクシーは片道23ユーロほど)

はるか先にポツンと見えるのが目的の礼拝堂

ここから歩いて行けということか… 結構遠い。
運転手さんに帰るときはここに連絡して、と電話番号が書かれた名刺をもらい、目的地に向かって歩を進める。
観光地ではないので人もほとんどおらず、同じく礼拝堂目当てに来ている人、散歩しに来ている人がポツリポツリ。
それにしてもなんてのどかな景色。観光地の賑やかな雰囲気もいいけど、ここは普段の生活ではあまり味わえないゆったりとした時間が流れている。

道中で通る農場には馬もいたり。かわいい

道の脇に咲くラズベリー

駐車場から20分程歩きようやく礼拝堂に到着。重い扉を開け、中へと足を踏み入れる。

等間隔に埋められたガラス玉

天井は穴が開いている

中は10人も入ればいっぱいになるような小さな空間。
無機質でミニマルな外観とは対照的に内部は有機的で、土の質感を残したテクスチャーが面白い。
ひだ状の曲面壁に等間隔で埋め込まれたガラス玉を通してかすかに注がれる光が神秘性を孕み、ここが礼拝の場であることに改めて気づかされる。
静謐な空気に包まれ、気分も落ち着く。
幸い私たち以外にもう一組、先客がいただけなのでゆっくりと見ることができた。

往復で約40分歩くわけだけど、この行程もまた、俗から聖、聖から俗へと緩やかに移行するための重要なアプローチになっているのかもしれない。
駐車場から電話でタクシーを呼び再び駅まで。
午前中まるまる潰れてしまったけど行ってよかった。

帰りは礼拝堂の裏の道から


ブラザー・クラウス野外礼拝堂
場所:Iversheimer Straße
53894 Mechernich-Wachendorf
 Mechernichもしくは Euskirchen駅からタクシーで約10分。(バスでの行き方もあるみたい)
夏時間(10:00〜17:00まで)
冬時間(10:00〜16:00まで)
月曜閉館