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ボロス・コレクション『Sammlung Boros #2』 | MERZ

ボロス・コレクション『Sammlung Boros #2』

屋上に増築されたペントハウスはオーナーであるクリスチャン・ボロス氏の住居として使われている。

ベルリンの中心エリア、Friedrichstraße駅から10分ほど歩くと、コンクリートでできた巨大な建造物が目の前に現れる。ベルリンのアートファンにはあまりにも有名なプライベート美術館「ボロス・コレクション」だ。2008年にオープンして以来、これまでに多くの来館者を魅了してきたこの美術館。第二次世界大戦中に防空要塞として建てられ、戦後はフルーツの保管庫やテクノクラブとして使われていたという。
建物の歴史も興味深いがそのような記事は他にも多く書かれているので割愛し、ここでは主に展示作品に焦点を当ててご紹介したい。


全5層、広さ3000平方メートルの広さを持つ美術館には国際的に活躍するアーティストの作品が展示されている。コレクションは1990年代から現在までの現代アート作品で、展示はこれまで2008年から2012年の第一回、2012年から2016年の第二回、そして2017年から現在にかけて開催中の第三回、と4,5年ごとに展示の入れ替えがあり、入館にはいずれも事前予約が必須。(ベルリンアートウィーク中は予約なしで入れる)
残念ながら初回の展示「ボロス・コレクション#1」はまだ渡独前だったので観れなかったが、オラファー・エリアソン、アンゼルム・ライラ、サンティエゴ・シエラ、ティラバーニャ、トビアス・レーベルガーなど20組のアーティストが名を連ね大きな話題を呼んだようだ。(画像なし)

第一回参加アーティスト
Michael Beutler, John Bock, Olafur Eliasson, Elmgreen & Dragset, Kitty Kraus, Robert Kusmirowski, Mark Leckey, Manuela Leinhoß, Sarah Lucas, Kris Martin, Henrik Olesen, Manfred Pernice, Daniel Pflumm, Tobias Rehberger, Anselm Reyle, Bojan Sarcevic, Santiago Sierra, Florian Slotawa, Monika Sosnowska, Katja Strunz und Rirkrit Tiravanija


Boros Collection #2

ヴォルフガング・ティルマンス(Wolfgang Tillmans.1968~)
イギリスのファッションモデル、ケイト・モスのポートレイト 1996(Vogueに掲載)

作品に劣らずこの建物自体がとてもユニーク。展示用に改装した白い空間と当時のままの状態で残した空間をうまく混在させている。

Alicja Kwade (1979~)

Alicja Kwade (1979~)
彫刻、光、音、映像などを組み合わせたインスタレーションでフィクションとリアリティーの関係を探るAlicja Kwade


続く「ボロス・コレクション#2」を観に行ったのはたしか2017年、展示替えの前だったか。第2回の展示作家もヴォルフガング・ティルマンス、トーマス・シャイビッツ、アイ・ウェイウェイ、トーマス・ルフ…というこれまた豪華な顔ぶれ。
普段は完全予約制のガイドツアー形式でしか入れないが、この時は4日間だけの公開展示が行われ、冬の寒い日、長蛇の列に並びながら20分ほど待ってようやく中に入ることができた。


中に入ってまず目を引いたのは現在に至るベルリンの歴史を刻み込んだコンクリート剥き出しの壁。そこに絵画、写真、インスタレーションなどの作品がなんの違和感もなく展示されている。ホワイトキューブの空間に観慣れてしまった眼にはどの作品も新鮮に映り、この異質な空間がかえって作品を引き立てているように感じた。

トーマス・ルフ(Thomas Ruff.1958~)
1989年から1992年にかけて制作されたStarsシリーズのうちの3点
(この写真に写ってないが左側にもう1点。)

星空を写した写真だがルフ自身が撮っておらず南米チリにあるヨーロッパ南天天文台の観測施設の高性能天体望遠鏡で撮影されたアーカイブからセレクトしているそう。
写真というメディアが持つイメージに対して客観的、批判的な視点から捉えた作品群。

トーマス・シャイビッツ (Thomas Scheibitz 1968~)
以前の記事で取り上げたシャイビッツの作品も。
左側に絵画、真ん中に絵画と彫刻の中間的な作品、右側には壁にポツリと掛けられたオブジェクトが展示されている。

階をまたぐことで普段とは異なる視点から作品を観れるのもこの建物の大きな特徴。全体のキュレーターというのはいないが、それぞれアーティスト自身が展示に携わっているため展示の質も高い。


個人コレクションというと絵画や彫刻作品など、いわゆる美的価値のあるものに偏り、趣味的な部分が露出し、辟易してしまうことがある。以前観た日本の個人コレクションなどはペインティングが多くて、特にその傾向が強いように思えた。
その点、ボロス・コレクションでは平面作品からインスタレーション、コンセプチャルな作品まで幅広く扱い、個人の嗜好というよりは、「今」のアートとは何か、というわからないものに対する好奇心のようなものがこのコレクションを形成しているように感じる。

アイ・ウェイウェイ(Ai Weiwei. 1957~)
中国から集められた様々な種の木(幹、枝、根)を組み合わせて作った『tree』
すでに死んだ木を切断し、さらに接合することで本物の木のように蘇らせた6mの彫刻作品

Michael Sailstorfer (1979~)
『Forst』2010

個人コレクションではあまり観ることのないプロジェクト系の作品も。

展示作家はドイツ人アーティストやベルリンを拠点に活動しているアーティストが多く現在のベルリンのアートシーンを反映した展示が観れるのも見所のひとつ。
中央吹き抜けの空間を上手く利用したサイトスペシフィックなインスタレーション作品などは全体のアクセントとなって鑑賞者を飽きさせない。このようなマーケットから敬遠されがちな作品がコレクションされているのはアーティストにとっても非常に重要なことだろう。

Michael Sailstorfer (1979~)

展示室に近づくにつれていい匂いがしてくると思ってたらなんとそこには山積みのポップコーンが。ポップコーンマシーンが定期的にポップコーンを吐き出し室内を埋めていく。

Cerith Wyn Evans (1958~)


展示を一通り観ていると美術館であれば通常あるはずのキャプションがどこにもないことに気づいた。そのため作家や作品に対してある程度の知識がないと誰の作品かは全くわからない。
どうやらこれには自宅に招かれて部屋に飾られた絵画を観るような感覚で楽しんでほしいという意図があるようだ。約80部屋を展示室に使った広大な自邸。。
初めてのボロスコレクションは私にとって今までにない鑑賞体験を与えてくれた。
<続く:次回は第3回展示、『ボロスコレクション#3』>

第二回展示アーティスト
Ai Weiwei, Awst & Walther, Dirk Bell, Cosima von Bonin, Marieta Chirulescu, Thea Djordjadze, Olafur Eliasson, Alicja Kwade, Klara Lidén, Florian Meisenberg, Roman Ondák, Stephen G. Rhodes, Thomas Ruff, Michael Sailstorfer, Tomás Saraceno, Thomas Scheibitz, Wolfgang Tillmans, Rirkrit Tiravanija, Danh Vo, Cerith Wyn Evans und Thomas Zipp


Sammlung Boros(ボロス・コレクション)
入館料:15ユーロ
開館時間:木〜日
完全予約制 : ホームページから予約可。英語/独語による1時間半のガイドツアー
Bunker, Reinhardtstr. 20
10117 Berlin-Mitte
https://www.sammlung-boros.de

Nami
2015よりドイツ在住。現在はドイツの美大に在学中。 主に絵画のことについて。