ゲルハルト・リヒター Ema (Akt auf einer Treppe) 1966年
ルートヴィヒ美術館(ケルン)コレクション
ドイツ美大オープンスタジオ、ヴォルフガング・ティルマンス展、ゲルハルト・リヒター生誕90年記念展など、ドイツ国内(とウィーン)で開催中の展覧会、1月から3月にかけて開催予定の展覧会を紹介する。
パンデミック下の入場規制
オミクロン株の拡大に伴い、今年に入ってドイツ全土で飲食店における2Gプラスルール(ワクチン接種者(geimpfte)や感染からの快復者(genesene)であっても、店内飲食の際にブースター接種または陰性証明の提示が必須)が適用された。美術館やギャラリー入場の際には今のところ2Gルール(ワクチン接種者or快復者のみ入場可)が適用されているものの、美大のオープンスタジオやオープニング、イベントなど人が集まる場所では2Gプラスの証明が必要なことが多い。
ドイツ美大 オープンスタジオ
『Rundgang / Jahresausstellung』
ドイツの美大では年に一度、オープンスタジオ形式の学内展が開催される。展示はほぼ全学生が参加しているのでドイツの美大に興味がある人には特におすすめ。ベルリン、ミュンヘンなどの美大は夏開催。
ハンブルク美術大学
Hochschule für bildende Künste Hamburg
『Jahresausstellung 2022』
会期: 2月11日~2月13日 (2Gプラス)
https://hfbk-hamburg.de/de/aktuelles/jahresausstellung/
Jahresausstellung 2022
ライプツィヒ美術大学
Die Hochschule für Grafik und Buchkunst Leipzig
『Rundgang of HGB 2022』
会期: 2月10日~2月13日 (2Gプラス)
https://www.hgb-leipzig.de/en/academy/calendar/1179
デュッセルドルフ芸術アカデミー
Kunstakademie Düsseldorf
『Rundgang 2022』
会期: 2月16日~2月20日 (2G)
https://www.kunstakademie-duesseldorf.de/die-akademie/rundgang/
Sommer Rundgang 2021
シュテーデルシューレ
Städelschule
『Rundgang 2022』
会期: 2月18日~2月20日 (2Gプラス)
https://staedelschule.de/de/calendar/rundgang-2022
Rundgang 2020
Kunstpalast |デュッセルドルフ
『エレクトロ : クラフトワークからテクノまで』
ELECTRO. Von Kraftwerk bis Techno
100年以上の電子音楽の歴史とアートの接点を包括的に紹介するドイツでは過去に類を見ない展覧会がクンストパラストで開催。「電子音楽」というジャンルを、300以上の展示品や体験型の展示を通して多角的に照らし出し、ハイライトとなるクラフトワークの作品からテクノまで電子音楽の歴史を概観する。
出展アーティスト・ミュージシャン・デザイナー
1024 Architecture, Daft Punk, Agnes Dahan, Laurent Garnier, Andreas Gursky, Haqq, Jean-Michel Jarre, Jacob Khrist, Kraftwerk, Christian Marclay, Mouse on Mars, Tina Paul, Bruno Peinado, Marie Staggat, Karlheinz Stockhausen, Gisèle Vienne, Sasha Waltz.
会期: 12月9日~5月15日
https://www.kunstpalast.de/electro
mumok |ウィーン
ヴォルフガング・ティルマンス(Wolfgang Tillmans.1968~)
『Schall ist flüssig』
1990年代以降、同世代で最も重要なアーティストの一人として、写真表現を牽引してきたヴォルフガング・ティルマンス。ポップカルチャーやクラブカルチャーの若者たちを撮影した初期の作品群、ポートレート、インテリア、風景、静物、抽象イメージ、宇宙… 、更に37カ国で撮影した建築を扱ったビデオ作品、ミュージックフィルムなど、これまでの仕事から最新作までティルマンスの全貌を紹介する。
会期: 12月12日~4月24日
https://www.mumok.at/de/node/185945
Schinkel Pavillon|ベルリン
H・R・ギーガー&ハンス・ベルメール
HR Giger & Hans Bellmer
映画『エイリアン(1979年)』の造形デザインを手掛けたH・R・ギーガー(1940~2014)とドイツ人シュルレアリスト、ハンス・ベルメール(1902~1975)の展覧会がSchinkel Pavillonで開催。
ナチスが理想とする新古典主義の「アーリア人像」への抵抗として人体を変形させたエロティックな身体を発表し、アンドレ・ブルトンをはじめとする多くのシュルレアリストに受け入れられたハンス・ベルメール。彼に影響を受けたと明言するギーガーもまた、幻想的な暗黒世界を描き、ベルメール同様に当時の美学や道徳観に挑戦し続けた。
本展では両者に共通する「抵抗する身体」をテーマにギーガーの代表的な彫刻、初期の絵画、ドローイングとベルメールのグラフィック、写真作品を紹介する。
会期: 1月22日~3月20日
https://www.schinkelpavillon.de
展示風景
K21|デュッセルドルフ
ゲルハルト・リヒター
(Gerhard Richter.1932〜)
『Birkenau-Zyklus』
アウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所の囚人が密かに撮影した4枚の写真を出発点に描かれたゲルハルト・リヒターの『ビルケナウ』シリーズ(2014年)。最初の段階でキャンバスに忠実に描き写された写真のイメージは、ホロコーストという主題における表象の難しさから、後に上から絵具で塗りつぶされ、最終的には4点の大きな抽象絵画へと帰結している。
ゲルハルト・リヒターの作品のなかでもとりわけ重要な本作は、4枚の灰色の鏡と、もととなった絶滅収容所の写真とともに、反射・参照・言及によって紐づく空間的なインスタレーションとして現在、K21で展示されている。
(その後ビルケナウシリーズは東京国立近代美術館で6月7日から開催されるゲルハルト・リヒター展にも展示予定。)
会期: 2021年12月18日~2022年4月24日
https://www.kunstsammlung.de/de/exhibitions/gerhard-richter
Augsburger Diözesanmuseum 2020年
ルートヴィッヒ美術館|ケルン
ゲルハルト・リヒター
『Sammlungspräsentation zum 90. Geburtstag von Gerhard Richter』
ケルンを拠点に長年活動してきたゲルハルト・リヒター。ルートヴィッヒ美術館には初期の代表的なフォトペインティングである『Ema』(1966年)や1971-72年のヴェネツィア・ビエンナーレへの出展作である『48 Portraits』などリヒターの重要な作品が何点も収蔵されている。本展ではリヒターの90歳の誕生日を記念して、美術館コレクションの中からポートレート、抽象絵画、ガラス、鏡の作品などを展示する。
会期: 2月1日~5月1日
https://www.museum-ludwig.de/de/ausstellungen/gerhard-richter-sammlungspraesentation.html
Albertinum|ドレスデン
ゲルハルト・リヒター
『Portraits. Glas. Abstraktionen』
ゲルハルト・リヒターの出生地であるドレスデンではリヒターの90歳の誕生日(2月9日)を記念して、3つの作品群『ポートレート・ガラス・抽象』約40点からなる展覧会が開催。
会期: 2月5日~5月1日
https://gerhard-richter-archiv.skd.museum/gerhard-richter-portraits-glas-abstraktionen/
新ナショナルギャラリー|ベルリン
ゲルハルト・リヒター
『Gerhard Richter Künstlerbücher』
ゲルハルト・リヒターの最初のアーティストブックは、1966年にシグマー・ポルケとのコラボレーションで制作された。それ以来、リヒターにとって本という媒体は作品や自身のアーティストとしてのイメージを理解するために、欠かせないものとなっている。
リヒターの90歳の誕生日に際して開催される本展は「アーティストのイメージ」「偶然のイメージ」「写真のイメージ」の3つのテーマで構成。これまであまり注目されることのなかったアーティストブックという側面からリヒターの思考、ものの見方を考察する。
会期: 2月10日~5月29日
https://www.smb.museum/museen-einrichtungen/neue-nationalgalerie/ausstellungen/detail/gerhard-richter-kuenstlerbuecher/
新ナショナルギャラリー|ベルリン
アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル
(Anne Teresa De Keersmaeker.1960~)
『Rosas. Dark Red』
ベルギーのブリュッセルを拠点に長きにわたって国際的に活躍するコンテンポラリーダンスカンパニー「ローザス」。
これまでパリのルーブル美術館、ケルンのコロンバ、バーゼルのバイエラー財団で公演されたローザスの『ダーク・レッド』シリーズでは、美術館の建築空間との対話を通してダンス、音楽、彫刻、建築の相互的なパフォーマンスを披露してきた。
振付家、アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルが呼吸をモチーフに考案した新ナショナルギャラリーのための『ダーク・レッド』が4日間限定で公演される。
会期: 3月24日~3月27日
https://www.smb.museum/museen-einrichtungen/neue-nationalgalerie/ausstellungen/detail/anne-teresa-de-keersmaeker-rosas-dark-red/
アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル/Rosas X “Dark Red Beyeler” 2020年
バイエラー財団美術館
ボン美術館
マリア・ラスニック (Maria Lassnig.1919~2014)
『Wach bleiben』
オーストリアを代表する画家、マリア・ラスニック(1919~2014)は数多くの自画像やポートレートを通して自身や他者の身体への認識といった実存的な問題と向き合い、絵画における身体表象を探求してきた。ボン美術館では、「言語と非言語」、「写真と絵画」といったテーマに沿って約40点の作品を展示する。
会期: 2月10日~5月8日
https://www.kunstmuseum-bonn.de/de/ausstellungen/maria-lassnig/
Ausschnitt aus: Maria Lassnig, “Du oder ich” (2005), Öl auf Leinwand, Foto: Gerd Mörsch während der Wiener Ausstellung im MUMOK (2009) © Maria Lassnig VG-Bildkunst
シュテーデル美術館|フランクフルト
アンドレアス・ミューエ(Andreas Mühe.1979~)
『Stories of Conflict』
ドイツ新世代の写真表現を牽引するアンドレアス・ミューエの展覧会がフランクフルトで開催。
社会の亀裂、暴力、ドイツ人のアイデンティティ、自身と家族の歴史… 。社会的、歴史的、政治的なテーマを扱い、多大な費用と労力をかけて、大判カメラでドラマチックに演出した作品群。シュテーデル美術館では過去作から最新作まで45点の作品を紹介する。
会期: 2月16日~6月18日
https://www.staedelmuseum.de/de/ausstellungen/andreas-muehe
アンドレアス・ミューエ展 Deichtorhallen Hamburg 2017年
グロピウス・バウ|ベルリン
ダヤニータ・シン(Dayanita Singh.1961~)
『Dancing with my Camera』
写真表現において先駆的な活動を続けてきたインド出身の写真家ダヤニータ・シン。
チーク材でできた家具のような構造体に、自身の写真イメージを自由に入れ替え、組み合わせ、アーカイヴすることができる編集可能な移動式の「美術館」を考案し、インドの社会問題を捉えた作品シリーズなどを発表。本展では初期の作品から主要作品、グロピウス・バウのために特別に作られた作品など、これまでの活動を包括的に紹介する。
会期: 3月18日~8月7日
https://www.berlinerfestspiele.de/de/berliner-festspiele/programm/bfs-gesamtprogramm/programmdetail_366042.html
Dayanita Singh, Museum of Chance, 2013
© Dayanita Singh
旧ナショナルギャラリー|ベルリン
ポール・ゴーギャン(Paul Gauguin.1848~1903)
『Why Are You Angry?』
植民地時代のエキゾチシズムやエロティシズムといった概念とゴーギャン作品の関係を考察する本展。
Angela Tiatia (ニュージーランド/オーストラリア), Yuki Kihara (サモア/日本) 、Nashashibi/Skaer (イギリス)、 Henri Hiro (ポリネシア)といった現代のアーティストの作品を並置し、ポストコロニアルの視点からゴーギャン自身が作り上げた「野生のアーティスト」の神話を検証する。
会期: 3月25日~7月10日
https://www.smb.museum/museen-einrichtungen/alte-nationalgalerie/ausstellungen/detail/paul-gauguin-why-are-you-angry/
Tahitianische Fischerinnen 1891年
ブンデスクンストハレ|ボン
シモーヌ・ド・ボーヴォワール
Simone de Beauvoir (1908~1986)
『Das andere Geschlecht』
1949年、作家であり思想家でもあるシモーヌ・ド・ボーヴォワールは西洋諸国における女性の状況を論じた『第二の性』を発表。性的イニシエーション、レズビアンの愛、中絶といったタブーを扱ったこの書籍は当時、批判と敵意の的となり大きなスキャンダルを巻き起こした。女性学やジェンダー研究の基礎となり、後世のフェミニストに多大な影響を与えることとなったこの本はどのようにして生まれたのか。
本展では、実存主義の哲学が新しい基準を打ち立てた戦後のパリで、この作品が生まれた経緯をたどり、女性運動における「フェミニズムのバイブル」の意義と受容を紹介する。
会期: 3月4日~10月16日
https://www.bundeskunsthalle.de/ausstellungen/index.html
人は女に生まれるのではない、女になるのだ。
On ne naît pas femme. On le devient.