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デュッセルドルフ芸術アカデミー『Rundgang 2019』 | MERZ

デュッセルドルフ芸術アカデミー『Rundgang 2019』


2月というと日本では卒業制作展が始まるシーズンだが、ドイツでは毎年この時期になるとオープンスタジオ形式の学内展が各美大で一斉に開催される。(ベルリン、ミュンヘン、カールスルーエなどは夏開催。)
今回、その一例として紹介するのは日本でも有名なデュッセルドルフ芸術アカデミーの学内展『Rundgang (ルンドガング) 』。
ヨーゼフ・ボイス、ゲルハルト・リヒター、ジグマー・ポルケ、アンゼルム・キーファー、日本人では奈良美智などそうそうたるアーティストが卒業生として名を連ねるアカデミーの展示にはコレクター、ギャラリストらアート関係者も多く訪れ、会期中の5日間は大変な賑わいを見せる。

入場制限の行列ができるのは数あるドイツの美大の中でもここぐらいかもしれない。

Rundgangは日本でいう卒展の雰囲気に近いが、大きく違うのはほぼ全学生が参加し、展示がクラス(教授)ごとにオーガナイズされているということ。これには日本とドイツの美大制度の違いによるところが大きいと思うので、まずはその違いについて触れておきたい。


① 学生の違い

日本とドイツの美大の展示を安易に比較することは難しい。その理由の一つが年齢層の違いだろう。30歳前後の学生(自分)も多く、大学に籍を置きながらアーティストとして活動する人も多い。自分でアトリエを借りるより大学にいた方が安上がりというのもあって6、7年学生を続けることも珍しくない。

日本
・高校卒業してすぐ、あるいは1浪、2浪して入学するのが一般的でスタートラインはさほど変わらない。年齢も20歳前後が大半。

ドイツ
・3割は留学生(自国の大学を卒業済みの学生が多い)ドイツ人学生でも一般大学で学んだ後、美大に入り直すというケースも珍しくなく、年齢、国籍、バックボーンもばらばら。平均年齢は総じて高め


② 大学選び

ドイツの場合はどの大学にどういう教授がいるのかというリサーチは必須。入試前に教授とアポイントメントをとって、作品を見てもらったり、クラスの雰囲気を見せてもらうのも重要。そういう意味では日本の大学院に近いかもしれない。ほとんどの美大が国公立ということもあって経済的な理由で大学を選ぶということもあまりない。

日本
・東京藝大を頂点としたヒエラルキーが少なからず存在し、大学選びもブランド力が基準となってくる。特に日本唯一の国立大学ということもあって藝大ブランドというのはいまだに人気。

ドイツ
・4、5年同じ教授のもとで学ぶということもあって「どの大学に入りたいか」というより「どの教授のもとで学びたいか」に重点が置かれる。大学によってレベルの差はあるものの割とフラット。


③ 学科とクラス

クラスに入れば、基本的には一人の教授のもとで卒業まで学ぶことになる。クラス内は年齢も大学に入学した年もばらばら。先輩後輩という概念もなくフラットな議論が交わされる。デュッセルドルフの場合は絵画だけでもトマ・アブツクラス、トーマス・シャイビッッツクラスなど6つのクラス(教授)に分かれている。

日本
・日本画、洋画、彫刻、版画等、ジャンルごとに分かれ、それぞれカリキュラムに沿って学年ごとに段階的に学んでいく。学科あたり1学年50人以上いたりと人数も多い。指導教員も複数。

ドイツ
1年間の基礎課程(ない大学もある)を経て、クラス分けが行われる。クラスは教授単位で分かれており、クラス内は学年(というかその概念がない)もばらばらカリキュラムもない。クラスは20〜30人と基本少人数制。


もちろん大学ごとに違いはあるものの大体こんな感じだろう。(個人の主観的な意見だが。)
Rundgangを観るポイントとして押さえておきたいのは、やはりどの教授のクラス展示なのかということ。ドイツの美大はマイスターの国というだけあってこの徒弟制度的なシステムが非常に重要で、学生の作品には各教授の個性が色濃く反映されていることが多い。
今回は学生展示ということなので個々の作品についてはあまり触れずにフォトレポートというかたちで紹介したい。

去年から新たに教鞭をとることになったアメリカ出身アーティスト、Ellen Gallagherのクラス(絵画)。過去にはピーター・ドイグやエリザベス・ペイトンなどドイツ国外のアーティストも教授として名を連ねている。ただしドイツ国外を拠点とするアーティストの場合ちゃんと来るかどうかは怪しい。クラス内のディスカッションはおそらく英語。

Ellen Gallagherkクラス
天井が高いので展示も映える。

Marcel Odenbach クラス (フィルム、ビデオ)

Marcel Odenbach クラス (フィルム、ビデオ)

学内では学生がビールやワインを販売しているので飲みながら展示を観て回る人も結構いる。

Andreas Schulze クラス (絵画)

Andreas Schulze クラス (絵画)(卒業展示)

Herbert Brandl クラス (絵画)(卒業展示)

グレゴール・シュナイダー(Gregor Schneider )クラス (彫刻)

 Martin Gostner クラス (彫刻)
天井高を生かしたダイナミックな作品も多い。

Eberhard Havekost クラス(絵画)

トマ・アブツ(Tomma Abts)クラス(絵画)

トマ・アブツクラス

去年から新たに教鞭をとることになったトーマス・シャイビッツ(Thomas Scheibitz)のクラス(絵画)

Franka Hörnschermeyer クラス(彫刻)
奥に見えるのは彫刻ではなくアーティスト本人の実物の足。このようなパフォーマンス的な作品もいくつかあった。

トーマス・シャイビッツクラス
鑑賞者を銃で狙い続けるといったパフォーマンスも。

Hörnschermeyer クラス(彫刻)

この通り、デュッセルドルフ芸術アカデミーはバリバリのファインアートの学校。
国際的に活躍する教授陣の個性を反映するようクラスごとに特色があり、部屋が変われば展示も作品のテイストも180度変わってくる。各展示室は学生たちが普段アトリエとしても使っているので学生生活の空気を肌で感じられるのもRundgangならでは。
ちなみに毎年、夏には卒展にあたるSommerrundgang が開催され、それぞれのクラスから合わせて40人前後、展示するようだ。とは言ってもやっぱり全学生参加の冬のRundgang のほうが有名なので人も来るらしい。
では今回はこの辺で。


クラス(教授)一覧 ※2019年現在

彫刻
Trisha Donnelly, Katharina Fritsch, Dominique Gonzales-Foerster, Martin Gostner, Thomas Grünfeld, Franka Hörnschemeyer, Gregor Schneider, Didier Vermeiren
絵画
Tomma Abts, Yesim Akdeniz, Herbert Brandl, Eberhard Havekost, Thomas Scheibitz, Andreas Schulze
絵画とグラフィック
Siegfried Anzinger
写真
Christopher Williams
ファインアート
Peter Piller
フィルムとビデオ
Marcel Odenbach
舞台芸術
 Johannes Schütz
(あと建築とかもあるのでこれが全てではない)


デュッセルドルフ芸術アカデミーホームページに過去の展示風景も載ってます。
https://www.kunstakademie-duesseldorf.de/die-akademie/rundgang/


Nami
2015よりドイツ在住。現在はドイツの美大に在学中。 主に絵画のことについて。